日本将棋連盟の谷川会長が辞任し、佐藤康光九段が後任候補に挙がっているようです。
佐藤九段は棋士会の現会長でもありますが、
日本将棋連盟と棋士会のどちらのトップも現役の棋士なので、両方の組織の違いがあいまいです。
棋士会の方は労働組合みたいなものでしょうから、トップは現役棋士であるべきだと思います。
一方で日本将棋連盟に関しては、今回の件で浮き彫りになったように、
会長や理事に求められる能力や資質は、将棋の力量とは何の相関もない、全くの別ものです。
現役の棋士、しかも自らの時間と能力の大半を将棋に捧げて結果を残しているトップ棋士が、
会長職に適任だとは、とうてい思えません。
谷川会長にしても、今回の件に関して「会長」としての責任は重い筈ですが、
棋士として、あるいは人間としての谷川九段には、何ら非難されるべき点はありません。
言ってしまえば、棋士の中で他の誰が会長だったとしても、
本件に際して、後から結果論で指摘されたような適切な対応ができた人はいなかったと思います。
翻ってプロ野球の世界でも、名選手だった人が監督になる場合がほとんどですが、これも理解に苦しみます。
技術的指導は選手としての実績がある人がすべきかもしれませんが、
それは監督の本分ではなく、監督に一番求められるのは選手の人心掌握能力だと思います。
となると、往年の名選手の場合は、かえって監督に不向きであるケースが多い気がします。
それまで陽の当たる場所しか歩んでこなかった人には、
地道に日陰から這い上がってこようとする選手の気持ちを汲み取りきれない可能性があるからです。
長嶋茂雄さんは、その最たる例だと思います。
選手としてはこの上なく偉大だったのだと思いますが、
監督としての適正は最低レベルだったのではないでしょうか。
地道に二軍で結果を積み上げてきているのに、
監督が自分の名前も覚えてくれていないのでは、一軍昇格の希望を持てる道理がありません。
まあ、好きでジャイアンツ入りを熱望するような選手であれば、同情する気はありませんが。
しかし、最近は以前のような結果を残せず、御本人もファンももどかしく感じていると想像します。
もし会長職に就いたとすると、棋士としての成績を現状から上向けるのはほぼ不可能であり、
それは佐藤九段も十二分にわかって覚悟しておられると思います。
上記の前言とは相反しますが、これまでの言動を拝見してきた限りでは、
佐藤九段は、トップとして組織を率いるのに必要な素養と意思を備えているようにも思えます。
将棋界に対する責任感も強そうですし、御自身の棋士としての可能性を投げうってでも、
身を粉にして職務に当たるという決意も感じられます。
棋士としての佐藤九段を事実上失ってしまうのは寂しいですが、
崖っぷちであるイバラの道を行く舵取りを託せる存在であるかもしれません。
ただし前提として、その会長をサポートする十分な体制を構築すべく、
「素人」である棋士だけではなく、しかるべき専門家を連盟に招聘すべきです。
今回の騒動中にネット上で確認できただけでも、
他分野の専門家ながら将棋にも造詣がある方が何人もおられたのですから。