打席に立ったカープの大瀬良投手に死球を当ててしまったシーンが話題になりました。
もちろん藤浪投手はわざとぶつけた訳ではありません。
その日も、イップスの症状に苦しんで動揺しながらも、必死にもがいているさなかだったのです。
同じ投手である大瀬良選手は、藤浪投手の精神状態と状況がよくわかっていたので、
死球を当ててしまって更に動揺している彼に対して、「気にしなくていい」と笑顔を見せました。
当時読んだ新聞記事は、大瀬良投手の人間性を賞賛していて、私も全く同感でした。
ところが、どうやら大瀬良投手を批判する意見もあったようなのです。
一体、どんな点に瑕疵があったというのでしょうか。
批判意見は、主に現場から強かったらしく、
「命をかけて野球をしているグラウンドで、死球を当てられた投手に微笑むなんてもってのほか」
という趣旨なんだとか。
緒方監督も大瀬良投手に、
「いい人というだけではグラウンドでは勝てない。いい人はグラウンドの外でやってくれ。」
と言ったそうな。
そうですか。いや、そうでした。
プロ野球とは、こういう価値観が支配している場所でした。
私には、大瀬良投手の行動を非難する意見の中に、一理をも見出すことはできません。
不可抗力で死球を当ててしまい、
選手生命を左右しかねない深刻な症状に動揺して頭が真っ白になっている投手を威嚇することでチームの士気を上げる。
粗暴で野蛮としか形容しようのない集団です。
選手は、臆面もなくそう言えるほど、本当に命をかけて野球をやっているのでしょうか?
命をかけて野球をやっている選手が、ベンチ裏で喫煙するでしょうか?
「命をかけた」真剣勝負のインプレー中に、一塁ベース上でランナーとファーストが談笑できるでしょうか。
なんというか、常識から著しく乖離し、独りよがりで独特な価値観や美徳に支配されている異様な世界。
素養のない、あるいは矛盾している言動があまりにも多すぎて、かつてファンとして入れ込んでいたのが恥ずかしいです。
大瀬良投手には、この世界では希少価値とも言える、良識ある人間性をこれからも大切にして、
今季以降も、この魑魅魍魎の世界で活躍して頂きたいです。