三太夫の「おれのいうことは正しい」

「株式投資」「将棋」「動物」をこよなく愛する頑固なひねくれ者の悠々自適な晴耕雨読生活

血液一滴でがんを診断したその後は


スポンサードリンク

最近、「血液一滴でがん診断」という話題がありました。

がん細胞から血液中に分泌された微量のマーカー(目印)を高感度で検出することによって、

画像診断等では発見できないくらいの早期がんの「存在」を確認できると。

また、そのマーカーの種類によって、がんが発生している臓器も目星がつくようです。

 

一見、画期的で私たちに大きな福音をもたらす技術のように聞こえますが、

私は、必ずしも好ましい結果ばかりをもたらすものではないと想像しています。

 

この一滴の血液検査でマーカーが検出され、体内のどこかにがんが発生している可能性が高いと診断されたとします。

そもそもこの技術の眼目は、「従来の検査では見つけられなかったような早期のがんを発見する」ことですから、

血液検査の後、画像診断なりで改めてがんの存在を確定することは困難だと思います。

もちろん、手術で切除することもできません。

 

だとすると、診断された後の選択肢はどうなるのでしょうか。

 

がんの存在を従来の検査で確認できるまで、注意深く経過を観察し、首尾よく見つけることができ次第、切除して完治。

おそらくこれが一番合理的な選択だと思いますが、現実的には、深刻な問題を伴うと思います。

血液一滴からがんの可能性を指摘されたその日以降、落ち着いた精神状態で生活できる人はどれくらいいるでしょうか。

実際には、がんとはいえ「早期」なので、喫緊に命に関わる状況ではないのですが、

仮にそれを理解できたとしても、体内のどこかにがんがあると言われれば、精神が千々に乱れる人が大半なのでは。

ストレスは免疫を弱めますので、それでかえってがんの進行が早まってしまうかもしれません。

 

また、がんが早期で小さいうちに積極的に治療をして治すという選択肢も考えられます。

この場合、抗がん剤放射線を使ってしまうと、これらは言うなれば「空爆」のような治療なので、

悪人(がん)だけではなく、善良な市民(正常な組織)までも多数巻き添えにしてしまいます。

ですので、悪人(がん細胞)だけを効果的に狙い撃ちにできるスナイパーのような「分子標的治療」が必要です。

 

つまり、早期がんを発見する技術については、

その発見した早期がんを効果的に駆逐する治療技術がセットになって初めて本領を発揮できるのです。

しかし、現状ではまだ後者が開発されていませんので、前者だけではかえって不幸なケースが増えるかもしれません。