その「謝罪」が含まれているあいさつの全文を読みました。
この手の謝罪会見でいつも思うのですが、
「申し訳なく思います」という言及のみで、謝っていることになるんでしょうか。
「申し訳なく思った」というのは本人の心の内を述懐しただけで、謝るべき相手に対して発した言葉ではありません。
「すみませんでした」というはっきりした言葉が必要です。
ただ、本人が反省の意を示したのは確かなので、そこのところは評価したいと思います。
渡辺竜王が謝罪したのは、「メディアの取材に応じたこと」に対してです。
毎日新聞や共同通信では「疑惑指摘を謝罪」という見出しをつけていますが、
これは渡辺竜王のあいさつの主旨を誤認している深刻なミスです。
疑義を感じて連盟に報告したこと自体は問題ではありませんし、
渡辺竜王もその点について謝罪している訳ではありません。
渡辺竜王の過失は、竜王位返上をたてにして挑戦者変更を連盟に迫ったことと、
その後に無責任な情報を週刊誌に流したことです。
前者については、本人が否定していますので、今回の謝罪の対象にはなっていません。
今回の件で、調査委員会が三浦九段の処分を妥当と判断したのは、
竜王戦開催が迫る中で、週刊誌に記事が載ってしまうという状況を考慮したからでした。
そもそも、週刊誌が今回の疑義を嗅ぎつけたきっかけは何だったんでしょうか。
個人的には、棋士から情報を提供した可能性が高いと思っていますし、
これまでの経緯を考えると、それをしたのが渡辺竜王だったと推測するのはそれほど的外れではない気がします。
メディアのいい加減な報道の話に戻りますが、
三浦九段が出場停止になった理由についても、正確に紹介していなかった記事が多く、
情報の伝達者としての矜持を疑ってしまいます。
誤認記事による影響力を鑑み、マスコミはもっと仕事に責任を持つべきです。
そのマスコミが、将棋界のほぼ唯一のスポンサーであるというのも、また深刻な話だと思います。