杉本八段の著書「弟子・藤井聡太の学び方」を読みました。
藤井七段に関する知らなかったエピソードもいくつかありましたが、
メインは杉本八段の来歴を紹介するエッセイです。
杉本八段は、大盤解説の際の話術もなかなかのものですが、
面白く読ませる文才の方は更に卓越していると思います。
将棋界に限らず、「師匠」と「弟子」の関係というと、
形骸化していたり、あるいは、ほとんど有機的な関係性ではなかったりというイメージを持っていました。
伝統的な職人の世界等で、弟子を罵倒する「厳しい」師匠の図が思い浮かびますが、
個人的には、こういった類いのほとんどが中身の無い示威行動に過ぎないと思っています。
しかし、この杉本八段を始め、将棋界には思慮分別のある「師匠」が意外とたくさんいて、
弟子に対して良い影響を与えている例をよく目にします。
藤井七段は、自分のことを才能型でも努力型でもなく「環境型」と分析していましたが、
この「環境」という要素の中で、師匠である杉本八段の占める割合は大きいようです。
この杉本八段、芯の強さは感じられますが、
公の場では何があっても温厚に振る舞う性格かと思っていましたので、
棋士を目指していることを学生時代の担任教師がけなしたことに憤慨し、
それ以降のその教師の授業を真面目に受けなかったという話は意外でした。